■情報対応ワーキンググループの活動
1997年から活動してきた情報対応ワーキンググループは、2003年秋から新たに「コミュニケーション推進専門委員会」として発足しました。この機会に、これまでの活動を含めてご紹介します。
ワーキンググループ活動開始のきっかけとなったのは、97年に当時の環境庁が“合成洗剤追放に尽力した人を表彰する”というそれまで積み上げられていた見解を否定する記者発表をしたことにありました。これは、「石けんも合成洗剤も環境影響は一長一短」という90年の衆議院環境委員会での水質保全局長答弁と、その結論が出るまでの研究結果が、環境庁のなかで忘れ去られていることを示したものでした。
マスメディアでも、合洗洗剤の安全性や環境影響の研究のいきさつや、過去の議論の経緯が忘れられていく半面で、かたくなに科学的に正しい知識に背を向けようとする一部の人々があることも事実です。
業界としては、それらの人々からの要望を受ける立場にある地方行政の担当者やメディアに向けて、これまでどんなことが学術的に調べられ、その結論はどうだったのかといった情報を提供していく必要性を痛感しました。そういう活動にあたる「広報・安全性・環境」の専門家集団をつくろうとしてできたのが、「情報対応ワーキング」なのです。その活動の中心は、行政やマスメディアへの積極的な情報提供にありました。
■コミュニケーション推進専門委員会に
安全性や環境に関して誤った情報、あるいは故意に誤解を促すような情報が流されることは、洗剤に限らず生活必需品全体に見受けられます。ほとんどは他社製品の本来問題にならないような事柄をことさら危険だと強調し、自社製品を売り込む『危険です商法』と同様の論法で展開されることが多いのです。こういった問題に対しては、普段から科学的・客観的データをベースとした情報を広く伝えていく、スピーディな幅広い広報活動が欠かせません。
そのために、このたび「情報対応ワーキング」をさらに発展させ、環境・安全・広報・消費者対応の専門家による「コミュニケーション推進専門委員会」が設置されることになったものです。
これまでのワーキンググループとしての6年の活動経験をベースに、生活に有用な石けん・洗剤の正しい情報を広く提供し、消費者のみなさんに安心して使っていただけるよう引き続き努力していきます。
今後も、行政や新聞社・雑誌社などマスメディアへの対応が活動の中心になると思われますが、これから予想される新しい動きとして、NGO団体とのコミュニケーションも重要になります。
加えて、ことが起こった後からの対応だけでなく、石けん・洗剤の有用性を伝えていくという工業会の基本姿勢をふまえ、セミナー開催などを通じて普段からのコミュニケーションを大切にし、関係各界に向けてより積極的に情報を伝えていくことを、重要な役割と考えています。そのような情報を的確に伝えていくために、データベースの整理・蓄積も進めていきます。
■誤った情報を是正し正しい情報の提供を
マスメディアの情報以外でも、地方自治体の窓口などにおいてある消費者向けパンフレットなどには、「合成洗剤は人体や環境に悪いものだ」と書かれていることがあります。
最終的にどの製品を選ぶかは、消費者の選択に任せるべきである、というのが当工業会の基本的な考えです。しかし、そのためにも正しい情報を知ることがなによりも重要です。
“合成洗剤に反対”するなどの意見の背景には、過去に展開された一部の根拠のない誤った主張や、出版物による強い影響があったと考えられます。それに対しては、その情報源のどこが誤っているかを具体的に指摘し、科学的に正しいとされる情報とどのように異なるのか、できるだけ直接に担当者を訪問してコミュニケーションを図りながら説明する、という活動を進めています。
また、地方自治体では、石けん使用推進や合成洗剤の安全性・環境影響を問題視する視点からの議員質問や住民からの要望が出されることがあります。そういったとき、それに対応する自治体スタッフに、製品の正しい最新知識をもつ人がいるケースはまれといっていいでしょう。自治体によっては「住民の要望に対して特段の理由がない場合は実施するのが自治体の責務」であるとされている所もあって、疑問があっても一応は検討せざるを得ない場合もあるようです。
そういった場合には、業界はどう考えているのかを聞いてみていただきたいのです。連絡をいただくと、資料提供にとどまらず、可能な限り自治体を訪問して、安全性や環境の専門スタッフが直接説明をするように心掛けています。
こうした状況にいち早く対応できるように、まずは、この委員会が定期的に実施しているセミナーの内容を、JSDAホームページの「JSDAの活動>セミナー」のコーナーに公開し、どなたでも見ていただけるようにしています。
■地道な努力をこれからも続けます
マスメディアへの情報提供や、定期的な自治体訪問といった、これまでの地道な努力が実って、誤った新聞・雑誌の記事は、次第に少なくなってきました。“純石けんだけが○で、石けんの添加物や合成洗剤は×”という先入観をもたず、公平な視点から環境問題へ取り組もうという記事が、主要新聞にもみられるようになってきました。
また、ダイオキシンや環境ホルモンについても、いたずらに不安をあおる危険神話は終焉し、冷静な分析に基づくまともな意見がでるようになりました。
日本の環境問題も、前向きな論議ができるように成熟してきたともいえ、そのなかで今後の活動を注目していただきたいと考えます。