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技術委員会

製品の品質に係わる標準化(JIS)、各種の公定書の改訂に関する事項、特許・商標などの工業所有権を含む知的財産権や製造技術、LCA、PRTRデータの調査・蓄積など、重要な技術問題を所管しています。
広く専門分野にわたるところから、油脂製品技術、石鹸技術、洗浄剤技術、知的財産について、専門委員会を設けて、それぞれの専門分野の調査研究、提言、関係諸団体との技術研究提携など、技術発展のための活動を行っています。

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洗濯実態の変化に対応しながら洗剤技術も進歩する
技術委員会の活動
2005年CLEAN AGE204号に掲載
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*洗濯を取り巻く環境の変化 |
少子高齢化や女性の社会進出など、近年わが国では社会全体において大きな変化が起きています。これらの社会変化により、消費者ニーズも大きく変わってきており、日用生活品を提供している業界・メーカーにはすばやい対応が求められます。
洗剤業界という産業を、消費者の変化という視点でみるときに、洗濯機の変化もまた重要です。この10 年間に、消費者意識の変化とともに、洗濯機も大きく変化してきています。大容量化、節水化、時間短縮化、低騒音化をうたったものの登場、さらにこれらの変化は、ドラム式洗濯機、洗乾一体型の洗濯機などの新しいタイプの洗濯機の登場へとつながっています。また、洗濯習慣では、お風呂の残り湯を洗濯に使用する家庭、ならびに夜洗濯する家庭の増加もみられます。このように洗濯条件・洗濯習慣の変化で洗い方が大きく変わってきており、それに対応して洗剤も変化していかなくてはなりません。ここからは、洗剤の技術の変化についてお話ししていきたいと思います。
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*洗剤製品に関わる技術の変化 |
・ノニオン性界面活性剤の使用が増加
日本では、1987年に世界初となるコンパクト洗剤が登場して以来、急速にコンパクト洗剤が普及しました。現在では、粉末洗剤はそのほとんどがコンパクト洗剤になっています。それに伴って、界面活性剤も少量でより洗浄力を上げるものが選ばれ、ノニオン性界面活性剤の使用量が増えています。
・さらに溶けやすい粉末洗剤の開発に向けて
今般、衣類を優しく洗うという観点から、洗濯機の撹拌力が弱くなってきているという傾向があります。さらに衣類の量に対する使用水量が減少し、くわえて洗濯時間も7分、8分と短くなってきています。これらの洗濯条件の変化から、粉末洗剤には、いっそう高い溶解性が求められてきます。
高い溶解性を実現するための技術アプローチとしては、界面活性剤自体を改良していく方法と、洗剤の粒子構造を改良していく方法があります。
アニオン性界面活性剤の低温での溶解性を改善するということでは、洗浄性能を損なわないで、いかに溶解温度を下げるかという研究が進められています。洗浄力を維持するために、アルキル硫酸塩や直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩のアルキル鎖長を維持しながら、分岐鎖として短鎖のアルキル基を導入する、といった技術が開発されています。
一方、洗剤粒子の構造自体を改良する技術に関してですが、従来のコンパクト洗剤は、一般に製造過程の途中で厚密化工程を取っています。厚密化すると溶解性が低下しますので、この厚密化工程を通らないようなコンパクト洗剤の製造技術が開発されています。そのキーとなる技術は、洗剤のビルダー成分だけで基本となる顆粒を作り、その顆粒の空隙の中に後から界面活性剤をしみ込ませることで、厚密化の工程を経ることなしに非常に密度の高い粉末洗剤を作ることができる、というものです。
・新しい酵素や漂白剤の開発も進む
また、漂白性能などの付加価値を持った新しい洗剤も登場しています。ここでは、酵素と漂白剤の配合による洗剤の高性能化についてお話しします。
酵素を洗剤に配合する目的は、蛋白質、皮脂などの汚れを分解したり、あるいはセルラーゼという酵素では木綿繊維に働いて、繊維の中の汚れを取りやすくするなどして、洗浄力の強化を図るためです。
洗剤用の酵素に求められる基本的な性質としては、弱アルカリ性の洗浄液中でも高い活性を示すこと、また低温でも高い活性を示すこと、汚れに対する分解活性が高く、かつ分解できる汚れの範囲が広いこと、繊維を傷めないといったことが重要なポイントとして挙げられます。
こうした働きをもつ酵素を開発するために、従来行なわれていたのは、自然界から新しい酵素を見つけ出すことでした。これも一つの方法ですが、最近のバイオテクノロジーを用いて、既存酵素を改良する方法がいくつか開発されています。
・バイオテクノロジーの進歩で酵素も変わる
酵素の性能・機能を究極まで高める方法として、部位特異的変異導入法と進化分子工学に基づいたランダムな変異導入法があります。これらの技術により、目的とする性能・機能を持った酵素の設計が可能となってきています。
・漂白剤を配合した洗剤
日本では、粉末洗剤のうち約40% が漂白剤を配合した洗剤になっています。漂白剤の配合によって、皮脂汚れやしみ汚れに対して、漂白剤が作用して汚れを落とし白く仕上げ、またその結果として色柄物に対しては衣料をより鮮やかに仕上げる効果があります。
漂白剤配合洗剤には、過炭酸ナリトウムや過ホウ酸ナトリウムが漂白成分として使用されていますが、近年では漂白効果をさらに高めるために、フェニルエステル誘導体のような漂白活性化剤が併用されるようになってきています。最近の漂白剤配合洗剤では、高い洗浄・漂白力のほか、優れた除菌効果も発揮します。
漂白活性化剤は、過酸化水素イオンと反応し、有機過酸を生成し、この有機過酸が高い漂白作用を示します。漂白活性化剤の設計では、過酸化水素イオンに比べて大量に存在する水酸イオンとの競争反応の中で、いかに目的とする有機過酸を効率よく生成させるかということがポイントになります。また、さまざまな種類の汚れに対して効果的に作用する疎水基(親油基)の設計も重要になります。
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洗濯や掃除という家事をより楽に、さらには楽しくしていただくために、今後の技術開発については、いっそう革新的な技術・商品開発が求められています。消費者の多様な期待と、潜在的なニーズを満足させる商品をつくるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
基本的な性能を最大限に引き出すこと、価値のある機能を作り出すこと、消費者の習慣や家電製品の機能の変化を確実に捉えて商品に反映させること、家事労働を軽減させ、さらに楽しめるようにするための発想を絶やさないこと…。さらには環境意識の視点も業界として高く掲げておかなくてはなりません。製品にかかわる環境負荷を包括的に低減させる、石油資源、天然資源の保全を考慮して原料を使用する等が必要になってきます。こうした点をこれからの商品開発の重要なポイントとしてとらえ、今後も努力をしていきたいと思っています。 |
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