■石鹸洗剤製品の根幹をなす油脂原料
油脂化学(オレオケミカル)の歴史は古く、あらゆる分野の産業で根幹的な原料として油脂が深く関係しています。動植物由来の油脂を生活に役立てることは、古代から行なわれており、石鹸はその代表的なものです。
石鹸の原料には古くは牛脂が多用されましたが、現在はパーム油やヤシ油が主流です。また、天然油脂から脂肪酸やグリセリンなどの油脂製品が製造され、さらに界面活性剤などの各種の誘導体が作られて、洗剤類の主要な原料となります。
このような背景のもと、当部会は、製品の母体となる原料油脂や誘導体に関する調査を中心に活動を行なっています。
■オレオケミカル産業と天然油脂の近年の動向
活動の主目的は、オレオケミカル分野の世界的な市況や動向を把握し、業界内で情報共有し役立てていくことです。
油脂は、食用・飼料用・工業用・燃料用など多方面に需要があり、需給バランスが変われば当業界も大きな影響をうけます。このため、広く関連業界から講師を招いての情報収集や、1〜2年おきに海外調査団を結成し、主要な油脂産出国や消費国の実情を現地で確認しています。製品を質・量の面で安定的に世の中に供給していくためには、こうした活動が大切となります。
オレオケミカル産業は近年、再生可能な資源である天然油脂の利用という観点からグリーンケミカルとして拡大傾向にあります。また、油脂は、世界的に食用需要が拡大するなか、再生可能なエネルギーとして注目され、石化燃料の代替であるバイオディーゼル燃料としての需要も拡大しつつあります。
これらに連動して世界の天然油脂の生産量は、この10年間年々増加してきています。パーム油、大豆油がその大部分を占め、特にパーム油は2005年以降は大豆油に代わって世界第一の生産量となっています。
このような事情からパーム油に関しては「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」が設けられ、環境に配慮した安定的生産に向けてマレーシアなどの主要産出国や輸入国企業が協力しています。ほかの油脂や石油製品の生産過程でも、環境や社会的影響への対応が重要視されるようになってきています。
また、界面活性剤原料でもあるエチレンは、中東の石油製品からの製造が主でしたが近年、より安価な天然ガスの使用が増加、北米ではシェールガス由来のエチレンが拡大しつつあります。会員社も高い関心を寄せていますので、当部会では油脂原料と同様に情報収集と共有化をはかっていきたいと思います。
■助成金制度によりグリセリンの用途開発研究を奨励 オレオケミカルではしばしば、目的の製品を製造する際に得られる副産物をいかに有効活用するかがテーマとなります。すべてを無駄なく使うことができれば、産業全体が活性化し、主要製品のコストの安定化にもつながるためです。
グリセリンは、脂肪酸や石鹸などの製造工程で製造されますが、副産物の位置づけとなり、その製造量は脂肪酸、石鹸などの製造量に依存します。2000年代に入り、パーム油を原料にしたオレオケミカルメーカーの新設・増設があり、グリセリンも増産され、供給過多の状態が発生しました。さらに2000年代後半には、バイオディーゼル燃料の利用拡大にともなう副産量の増加が供給過多を拡大させる懸念材料となりました。
一方、グリセリンは、保湿や乳化、安定化などの機能をもつため、もともと医薬や化粧品、樹脂や塗料などの分野での利用価値が高いものです。
当工業会では、グリセリンの新たな価値を創出して需要を高めようと、2007年から新規用途開発研究に対する助成金制度をスタートさせました。国内の大学や研究機関などから年々応募が増えており、運用を担う当部会としても、さらなる需要拡大に寄与できること、そして、研究機関においてオレオケミカルへの関心が高まればと考えています。
■部会活動の今後のテーマは
日本国内のオレオケミカル業界は主要原料油脂の大部分を輸入に依存しています。また、今後の天然油脂の需給バランスは、需要が拡大してゆく食用油脂に大きく影響されていくものと推測されます。このため、微細藻類から産油する技術など、業界製品の根幹をなす原料油脂の新たなる調達方法や生産技術の探索などに当部会も関わっていきたいと思います。