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2003年12月15日更新
01.*お茶の間の目線(1) *目次へ 
参照カテゴリ> #03.基礎,洗濯 #03.CLEAN AGE 196号 

*お茶の間の目線で「洗剤」を見直してみると
< 第四回 >

なぜ「洗剤は有害」説が広まってしまったのか
確かな情報を見極める眼をもつことの大切さ

妻*夫*のお茶の間の会話。
先生*濯木先生と茶の時間。


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 この前インターネットであちこちみていたら、「洗剤が人間の身体に悪い影響を与える」と「洗剤は有害」を妙に熱っぽく主張しているページがあったのよ。
 昔ほどではないんだろうけれど、そういうのって、未だに完全にはなくならないんだね。
 濯木先生、今日はあまり楽しい話ではないかも…とおっしゃっていましたが…。
 そうなんです。誰にとっても愉快な話ではないけれど提起されたことは重大だし、洗剤を見直すとき、「人体有害説」は避けてとおれない問題であるし、しかも消費者としても溢れる情報のなかで、その見極めをしなければならないという今後にも大きな教訓を含んでいますからね。
 もし、ホントに洗剤が人体に毒性があるならば、いま誰もつくらないし売っていないし誰も使っていないし買っていないから、そんなことはないはずですが、そもそもそれはいつからどこからでてきたのですか。
 ちょっと古い話になりますが、洗剤有害説が一部の研究者によって初めてとなえられたのは昭和37(1962)年のことです。「洗剤は赤血球を溶かし酵素作用を妨げるので有害だ」という説でした。そしてこれを講演執筆活動で精力的に展開され、マスコミでも大きく報道されセンセーションを引き起こしています。
 もしそうなら放っておけない問題ですが、行政などはどう対応したんでしょう。
 厚生省は食品衛生調査会の検討をふまえ、「通常の使い方では人の健康を損なう恐れはない」と公式見解を発表しています。
 洗剤を飲んで死んだとか自殺者がでたとかいう?
 新聞でも「中性洗剤が原因」と報道され、社会不安をあおりました。いずれもその後の裁判や病院の診察で、洗剤が原因ではないと否定されています。
 有害説はこの後も別の学者によって、昭和44(1969)年には「洗剤が口から入ると胎児に影響がある」とか、また続いて「台所用洗剤を皮膚に塗るだけ催奇形性(奇形児が生まれる可能性)がある」、「発ガン性がある」とか次々と主張され、またマスコミが大々的に報じました。
 それは事実とすればショッキングな話ですが、それらの説は科学的に正しいものだったのでしょうか。
 科学的というのは、なによりも客観性があるということが必要です。実験の結果は、正しければ誰が追試しても同じ結果にならなければならないし、学内紀要や学内研究発表会などではなく、学説は必ず第三者の審査チェックが働く専門誌の論文などで発表されるべきなのですが、洗剤有害説はそういう段階を踏まず、もっぱらマスコミで宣伝され広まったのです。
 催奇形性説については、確か複数の大学合同で追試研究が行なわれたんですよね。
 そうです。すでにいくつかの研究もあって、専門家レベルではまったく問題にならないことでした。しかし、前の有害説の経験もあったし、なにしろ問題が問題だけに、厚生省も放ってはおけません。すぐ乗り出しました。その催奇形性を発表した学者も含めた四大学合同の研究チームで、共同の実験研究が行なわれ、その結果、研究チームの一致した結論として、そういう事実や懸念がないことが確認されたのです。
 それは、いつのことですか。
 公式な結論は、昭和51(1976)年に発表されました。
 でも、おかしいですね。その後も有害説は沈静しなかったように思えるのですが…。
 それがこの問題のおかしいところなのですね。科学的・学術的に否定されても、「やっぱり洗剤は有害だ」という主張が、手を変え品を変えて繰りだされていました。昭和48、52と54年の三度も国会質問があり、そのたびに三木、福田、大平の三首相が、学術的な研究結果から、有害説を否定する国の見解を答弁しています。
 外国でも同じように問題になっていたのですか。
 それもまた、おかしいところなのですが、洗剤有害説は、外国では問題にならなかった話です。これは、日本だけの特殊な問題なのです。それだけでも、日本のそれが科学や学術の問題ではなかったともいえますね。
 その時代のムードもあったのかもしれませんね。
 とにかく、厚生省も、次々とさまざまな形で拡大するこの問題に決着をつけるため、国内外の研究論文や文献データなど約600編を収集し、それらを当時の四日市ぜんそく、水俣病などの公害裁判でも実績のあったトップクラスの公衆衛生学者5人に検証を依頼し、報告資料集としてまとめた『洗剤の毒性とその評価』がでたのは、昭和58(1983)年のことです。
 公害裁判となにか関係があったのですか。
 いやいや、この問題へのアプローチを公正なものとするために、あえてこれまでこの分野に手を染めていない、先入主のない、過去の行きがかりにもとらわれない、白紙の研究者に委託した、ということです。
 その『洗剤の毒性とその評価』という題名だけでは、毒性があるのかないのかわかりませんね。
 400ページ近いものですが、簡単にいえば、その結論は「洗剤を有害だとする説は、現実には起こりえない条件での話であり、実際には安全性に問題は認められない」というものです。
 その、外国では問題にもなっていないことで、いわばわかりきった結論にたどりつくのに、ずいぶん膨大な時間と労力がかかったということですね。
 でも、ますますわからなくなってきたのですが、それにしてはいまだに「洗剤は害がある」と信じている人、一生懸命主張している人、また不安という人が一部にあるのは、いったいどういうことなんでしょう。
 それが科学や学術の問題ではなく、運動や組織やビジネスにつながっていったからだという見方も…。
 ちょうどこのころ、合成洗剤反対運動としての「合成洗剤研究会」がはじまり、有害説はそうした運動に大きなエネルギーを供給することになりました。それがやがて「危険性を研究する=洗剤を追放する」派と、「影響を研究する=石けんを推進する」派に分裂しながら活動を続け、今日までいろいろな影響を与えてきたといえるでしょう。
 かつては労働組合や政党や生協、消費者運動、住民運動などを中心に、そして近年では環境をうたい文句に商売をしようという人たちなどを中心にして、実にさまざまな情報が流され続けていますからね。
 金魚やゴキブリが死ぬとか、カイワレ大根が発芽しないとかいう類の「洗剤有害実験*」もありましたね。
 科学的に検証もされていない情報が、都合のいいように振り回され、学術的に否定された話も、また表現を変えて使い回す、そんな情報満載の本がたくさんあり、いまでも公共図書館にも後生大事に蔵書されている、そして一般消費者がそんなものをよりどころにする状況も問題ですね。
 情報時代というのは、何が正しいのか、判断できる目を養うことが大切なのですね。
*エラ呼吸をしている金魚などは、界面活性剤がエラに吸着すると水中での酸素呼吸ができなくなるからであり、ゴキブリも気門という呼吸器がふさがれるためで、サラダ油などでも窒息死する。カイワレなどの発芽も人体毒性とは関係なく、紅茶やビール、食塩水でも発芽しない。


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