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2007年3月15日更新
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参照カテゴリ> #01.社会 #06.CLEAN AGE 208号 


“科学的根拠のある情報” の出し方・受け止め方

誤った無責任な情報の氾濫をどのように考えるべきか
インタビュー
唐木 英明 先生
に聞く

(日本学術会議会員・2部部長、内閣府食品安全委員会専門委員、東京大学名誉教授)


洗剤と石けんについての科学的でない誤った無責任な情報が、相変わらずさまざまに流布され続けている状況は、いったいどのように考えるべきなのでしょうか。国立健康・栄養研究所のWeb でも、“科学的根拠のある情報とは?” と題して、食品の有害性情報を評価するさいのポイントがQ&A形式で掲載されていますが、これらに関連して、科学的に考えるということについて、専門家のご意見を伺ってみました。

------ わたしどもの業界では、1960 年代から洗剤の人体と環境への影響について、害があるとか汚染の原因だとか、いろいろといわれてきて、それが科学的に否定されてきた…という歴史をもっているのです。

 動物には、生き延びるために必要な本能がありますね。たとえば、恐怖感は最も根源的な感情で、危険な相手に出会ったとき、恐怖を感じて逃げることで命が助かるのです。相手が危険かどうかわからないときは、どう行動したらいいのかわからない。それが不安です。一瞬行動が止まったときに相手が飛びかかってくる。だから不安は一番危険な状況で、動物は不安に陥らないようにしなければならない。その対策は実に簡単で、安全でないものは全部危険として、白黒二分法で判断します。
 人間もまったく同じで、白黒判断の本能を持っている。問題が食の安全とか化学物質の安全になっても同じです。よくわからない不安= 危険に、パッと分ける。そしてこれを避けようとし反対する、これは自分を守る本能なので、誰もそれを非難できないのです。
 フロイトが言ったことばの一つに、「われわれは正体がわかっているものに恐怖を感じ、正体がわからないものに不安を感じる」というのがありますが、このことを言っているのです。
 こんな本能があるので、いろんな形で危険情報ばかりが喧伝されて広まってしまう。メディアも、危険情報ばかり取りあげるが、安全情報は知らん顔です。それは、みんな危険情報は聞き逃せないから一生懸命になるけれど、安全情報はたとえ聞き逃しても差し支えないからでしょうか。
 
------ さまざまな活動を通じて、洗剤がよくないという誤った危険情報を修正し、誤解を解くための努力を続けているのですが…。
  
 なかなか、それは大変でしょうね。というのは、危険情報は、いったん耳に入ると、心に深く残ってしまうのです。そして、後から安全情報がやってきても、それは受け入れないという特徴があります。
 いやそうじゃありませんとか、それは間違いですよとかいっても、なかなか誤解は解けないものなのです。なぜかというと、危険情報を信じると命が助かるんだという先入観ができている。これは生きていくために絶対に必要です。いちいち考え直さなくても、前の記憶通りに行動すればいいのですから。
 そうして、一度できた先入観は変えられないし、変えようとするにはものすごい努力がいる。変えちゃいけないと、本能はいっているわけです。
 30年前でも50年前でも、情緒的に覚えた先入観はなにかあるたびにフラッシュバックするのです。その後に、“実はあれは間違いで安全なんですよ”という情報も、多分見ているはずですよね。でも、それはツーと通り抜けてしまう。そしてまた、「怖い」という情報だけが戻ってきてしまうのです。

------ 国立健康・栄養研究所のWeb では、健康食品をめぐる科学的根拠のある情報の見分け方などについて、参考になる事柄を述べているのですが、われわれの業界は洗剤・石けんなどの日用品です。これは同じようには考えられないものでしょうか。

●科学的根拠のある情報とは?
参考:国立健康・栄養研究所Web の記事目次→
http://hfnet.nih.go.jp/contents/index2.htmlより引用
Q1「科学的根拠のある情報」とはどういうものですか?
Q2 再現性とは何ですか?
Q3 テレビ、新聞、雑誌などで取り上げられていたのですが...?
Q4「専門家」「博士」「研究者」が言っていたのですが...?
Q5 細胞や動物の実験で効果が証明されているようですが...?
Q6 特許番号は科学的根拠ではないのですか?
Q7「体験談」は科学的根拠にはならないのですか?
Q8「学会発表」と「学術論文」の違いがよく分からないのですが。
Q9 専門誌に掲載になった学術論文ならば信頼できますか?
Q10 インターネットなどで情報を調べる場合、どんな点に注意すればよいですか?
Q11 情報がどれくらい信頼できるか、どうやって見分けられますか?


 この国立健康・栄養研究所のWebも拝見していますが、ここに書いてあることは、食品だけでなく日用品などについてもほとんどそのまま当てはまるものです。けれども、一般の人にはまだむずかしいですね。
 心配するのは人間の本能です。科学的根拠云々というのは、理性の問題ですね。ところが、いくらそれをいわれても、“ほんとかなあ” という本能的な疑いが、どうしても残ってしまうのが普通の人間なのです。
 われわれ人間は理性の動物だといっているけれども、お酒三合か四合いただけば、それはすぐ消えてしまうじゃないですか。理性は、そのくらい弱いものだということもまた、忘れてはいけないのです。
 もちろん、本能の赴くままに行動していたのでは、社会は成り立ちません。理性で本能を抑えないといけないのです。理性のもうひとつの働きは、リスクをきちんと評価できるということです。
 リスク管理の基本はもちろん科学ですけれども、感情情緒は無視できないのです。
 よくわれわれは、科学だけで押し切ろうとする。ところが、それをやると失敗することも散々経験している。科学の話は大事なんです。でも、いきなりそこに行ってはいけないのです。

------ 日本石鹸洗剤工業会としても、行政などへの情報提供を続けてきていて、自治体とまた新たな対話をはじめようとしています。一部の自治体ですが何十年も前のすでに学術的には否定されていることが、いまだに条例に書き込まれたりしているところさえもある。それでお互いに科学的根拠というのが、なかなかかみ合わないこともあります。

 とかく業界が発信する情報は、受けるほうが最初から疑ってかかる。信用されていないのですね。対策は、中立的な団体などを通じて、受け入れやすい窓口をつくるとか、飽きずに繰り返し情報を提供して、露出度を高め、ここでもみたあそこでみたという状況をつくるとか…。
 リスクコミュニケーションのいちばん大事なところは、なぜそう思っているのか、その考えにこだわるのかを徹底的に聞いてあげることです。それを聞いてあげるなかで、確かに昔の洗剤はそうでしたけれども、最近はこうなんですよということを少しずつ情報を出していく。大事なことは、生産から消費までの、すべての段階の関係者が目的を共有して努力しないと食の安全も環境も守れない。
 わたしたちもあなたがたと協力して一緒に考えているということを理解してもらい、相互理解を醸成する。やはり、最後のキーワードは信頼感ですね。
 話がかみあうようにするにも、時間がかかる。相手のいうことを否定してはいけない。40 年前は確かにそうでしたと。しかし、われわれもその後努力して、こういうふうに変わってきましたというのを、少しずつ説明していくよりしかたがないのですね。
 信頼感をつくるのにどうしたらいいのか。それを目標にして活動するのが、リスクコミュニケーションの最大のポイントなのです。

------ 滋賀県などは新しい目標に向けて、自分たちと消費者団体とともに歩み始めようといったケースがでてきています。生協でも、これまで洗剤売らないといっていたようなところでも、だんだんとおいて売るようになってきました。

 生協は小売店であるとともにメーカーなんですね。だから、売るものがないとやっていけない。添加物などでもかなり現実的な路線をとるようになっている。とらざるを得ないのです。
 これまで、いろんな運動や団体の活動が、ともすると感情論だけでやってきた。それを脱してもう少し科学的な議論ができるような状況や舞台をつくる。それが大事で、それができると初めて、行政が行なう規制の決定に消費者が参加できるのです。
 行政だって、感情論だけで規制策を策定することはできないですよ。
 業界も問題で、たとえば添加物についても業界内部では無添加で儲けているところがいっぱいある。無添加を売るということは、業界として否定しなければならない
“添加物怖い” を助けているわけで、一方の努力を打ち消しにしている。
 業界の内部では、徹底的に科学論争をするべきですよ。「洗剤は怖いけど石けんはいい」とかいって売っていますが、それに科学的根拠があるのか。わたしなどは“裁判してでも争え” と、添加物に関しては申しあげています。
 とにかく日本では、情報の根拠を確認しないですね。オレオレ詐欺も確認すれば防ぐことができるのに、それをしない。無添加や無農薬やマイナスイオンが身体にいいことを証明した科学論文を、わたしは見たことがあリません。
 消費者がいつも誤魔化されている。こんなおかしな社会はないですよ。やはり科学的におかしなことをやったら誰かが文句を言う、裁判に訴える、そういうのを誰かが本気で示さないといけないですよね。



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