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2007年10月5日更新
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参照カテゴリ> #02.リスク 

* 化学物質の安全シリーズ (1)

化学物質の安全・安心とは?

製品評価技術基盤機構(NITE)
化学物質管理センター 所長
坂口 正之 氏

(2007/8/28開催)

独立行政法人 製品評価技術基盤機構
化学物質管理センターへのリンク

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1)化学物質とリスク管理
2)化学物質の有害性(ハザード)と毒性試験
3)化学物質の暴露評価
4)リスク評価の方法
5)リスク管理のポイント
6)まとめ

 1)化学物質とリスク管理
1-1 化学物質とは何か?
化学物質は「人が作った人工物」や「有害なもの」と言ったように誤解されている場合があります。世の中の物質は、全て元素又は化学物質でできています。私たち人間も化学物質のかたまりです。また、天然物も人工物もどちらも化学物質であって、安全性も同じ考え方で考える必要があります

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1-2 安全性のモノサシはリスク
毒性の強いものも暴露量が少ないのなら安全です。一方、毒性の弱いものも暴露量が多ければ危険です。
つまり、リスク(危険性の程度)は、その物質のハザード(毒性)と暴露量(摂取量)の掛け算で決まります。
これは、一般の化学物質、薬、または農薬であろうと全て同じ考え方です。
このリスク評価の仕組みを理解した上で安全安心となるようなリスク管理を行う必要があります
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1-3 化学物質管理の流れ
ハザード評価(=実際にその物質がどれだけの毒性があるか)と、暴露評価(=実際にどれだけの量が体に取り込まれるか)これらの二つを基にリスク評価を行います。その評価結果から、どのような管理をしたらよいのかを決めていきます
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 2)化学物質の有害性(ハザード)と毒性試験
2-1 化学物質のハザード(有害性)の種類
ハザードの例には可燃性・爆発性があり、これらは、高圧ガス取締法、消防法等で管理されています。
人への毒性としては、急性毒性、例えば青酸カリなど飲んで急に影響が生じるものがあり、これは毒物劇物取締法で管理されています。また、長期毒性(慢性毒性)はじわじわと影響するもので、様々な種類があります。
さらに、生態毒性もあります。例えば水棲生物は、藻類(一次生産者)、ミジンコ(一次消費者)、魚類(二次消費者)といった各段階の代表生物で毒性を評価しています。その他に地球環境全体への影響などもあります
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2-2 毒物の半致死量(LD50
毒性が強い物質はどのようなものでしょうか? 毒性が非常に強い物質の上位はみな天然毒です。
最強の毒物がボツリヌス菌毒素D。これ以上強い毒物は今のところ見つかっていません。ボツリヌス菌による食中毒により死亡者が出た事例があります。
LD50(mg/kg)とは、例えばボツリヌス菌毒素Dの場合、体重1kgあたり3.2×10-7mgの量を投与すると、半数の動物が死に至るだろうという量です。青酸ガスだと3mgつまり、体重50の人の場合は3×50=150を投与すると半数が死ぬということ。
ボツリヌス菌と青酸ガスの強さを比べると、1000万倍(=10の7乗)の違いがあり、この差は大変大きなちがいです。例えば、1000(=10の3乗)の違いというだけでも大変大きなもので、這い這いする赤ちゃんのスピードを10の3乗とすると、ジェット機のスピードになります。単位を理解することも大切です
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2-3 化学物質の摂取と人体への影響
これは今日のセミナーで最も重要なスライドで、「用量反応関係線」という有名なグラフです。
ある物質を摂取した場合、ある投与量までは全く影響がない範囲があり、それを「閾値」いいます。
たとえば食塩でも一度に150グラムを摂取すれば死ぬといわれています。私たちは食塩を毎日10グラムちょっとくらい摂っていますが、影響はありません。
つまり全ての化学物質はこの閾値内でコントロールしていればリスクはないと考えられます。閾値を調べて、その範囲内の暴露レベレで使えば安心安全ということになります。
アルコールを例にとって見ましょう。
すこし飲んだだけでは酔いません。これは閾値範囲内といえます。もう少し飲むと少し酔ってくる。この生理機能変化は「影響量」の範囲に入ってきたということです。更に酔っ払って酩酊するくらいになると「疾患・中毒」が起こる「中毒量」の範囲となます。さらに飲めば「死亡量」の領域にはいり急性アルコール中毒で死亡することになります。
すべての化学物質で用量反応関係線が存在しますが、それぞれの化学物質でこのグラフの傾きや閾値の大きさが違います。
化学物質の管理は、いかに閾値の中でおさめるのかにポイントを置いています
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2-4 必須物質も有害に
酸素のような生きていくのに必須の物質でも多くとれば毒となります。
また必須ビタミンの過剰摂取もそのひとつ。ビタミンAが多く含まれるホッキョクグマの肝臓などを食べる習慣があるイヌイットの人たちの風土病もその例。
必須といわれるものも含め、全ての物質は摂りすぎれば体に支障をきたすことになります
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2-5 毒性試験における指標
化学物質のリスクを学ぶなかで、覚えておくべき指標は、NOEL(ノエル)とNOAEL(ノアエル)。
摂取した物質に対してなんら有意な変化を示さない最高投与量が「無影響量」のNOEL。
また、毒性学的な全ての有害影響が見られない最高投与量が「無毒性量」のNOAEL。
閾値であるNOELやNOAELを知ることは、化学物質の評価や管理の上で重要なこととなっています
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2-6 毒性試験結果の評価
物質の毒性を調べる為に、ネズミ1当り毎日どの程度を投与したら、どのような影響があるかで調べています。
10mgを投与した場合は影響がなかったが、50mg投与した時毛が伸びたという影響があった、更に250mgを投与した時はコレステロール値の上昇、1000mg投与の場合は肝細胞の空胞化の影響があったと仮定します。
肝細胞の空胞化やコレステロール値の上昇は有害な変化であるのに対し、毛が伸びたのは無害です。
これらから、毒性ではないが影響があった50mgが無毒性量(NOAEL)ということになり、何ら影響が出なかった10mgが無影響量(NOEL)となります。つまり、この物質は10mgよりも低いレベルの暴露量で使用すれば影響は現れないということになります。このように投与量を変えて試験をすることで、化学物質の閾値などを求めています
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2-7 疫学的手法によるハザード評価
実験動物を用いる毒性評価以外に、疫学的手法によるハザード評価があります。
それは例えば、労働災害などの実績を統計処理する方法などが挙げられます。
例えばアスベストを吸引しうる環境で働いていた人の肺がんの罹患率やベンゼン吸引と白血病との関係を調べる等です。
このように実際に起こった影響度をみる手法が疫学的手法です。
この評価の特長は何よりも事実は何よりも重いということ。人での調査結果は動物実験よりも優先されます。
ただし、この方法でも有害性の証明はできても、無害性の証明はできません。
がんになることを証明できても、がんにならないということは証明できないのです
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2-8 化学物質の毒性発見
特定の化学物質が影響を及ぼす組織や臓器には、特長があることがわかっています
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2-9 発がん性物質
IARC(国際がん研究機関)が発がん性の物質の分類をしています。
発がん性物質は非常に多く存在します。ただし、グループ1(ヒトに対して、発がん性がある)に分類されるからといって必ずしも発がん性が強いということではありません。ピーナツのカビの毒であるアフラトキシンは、少量で肝臓に癌を発生させますが、一方で太陽光照射のような日常生活と密接なものもあります。つまり、発がん物質だからといって全てゼロにしなければならないと考えるのは早計でしょう。
どの物質がどのグループに分類されているかは、IARCのホームページ http://monographs.iarc.fr/を参照してください
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 3)化学物質の暴露評価
3-1 化学物質の暴露形態
化学物質の暴露形態には、このように様々な形態があります

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3-2 化学物質の暴露評価方法
化学物質の暴露量は、空気から、水から、食品からそれぞれの暴露量の足し算です。
空気は成人平均で一日20m2吸っているので、化学物質の空気中の濃度に20m2を掛ければ算出できます。
水は成人平均で一日2リットル摂取するので、水中の化学物質濃度にこの量を掛けます。
食べ物由来の暴露量の算出は難しいですが、日本人が食べている食品中の一日平均摂取量と食品中の濃度から計算するなどの方式があります
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3-3 化学物質の蓄積性
環境中での残留性が高く、生物へ蓄積性が高い物質があります。蓄積性の高い物質の場合、魚の体に蓄積する量は、魚が棲んでいる水の濃度の約2万倍になることもあります。日本人一日平均魚介類摂取量は約120gなので、つまり、魚介類を摂取することはその2万倍の2.4トンの水を飲んでいることと同じになります
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 4)リスク評価の方法
4-1 MOEによるリスク評価
リスク評価は、閾値の下でいかにコントロールするかという問題と密接に関連します。
ひとつの指標に暴露マージン(MOE)があります。これは無毒性量を摂取量で割ったものです。MOEマージンは大きければ大きいほど安全となります。
不確実性係数(UF)については、動物実験で求めた値をそのまま人間に当てはめてよいのかというところで考えます。
例えば、NOAELの算出に用いた試験データは、
(1)動物の種類が違えば毒性のメカニズムや感受性が違う可能性があります。そこで、人間の方が実験動物よりも10倍感受性が高いと安全サイドに仮定します。
(2)次に、動物実験の試験期間の差を考えます。28日間だけその物質を暴露させた場合、一年間投与した試験との比較で、その分の安全係数10を掛けます。
(3)更に個人差を10とします。
この場合は不確実性係数積(UFs)は10×10×10=1000となります。
この不確実係数積(UFs)については小さければ小さいほど信頼性が高くなります。
MOEと不確実係数積(UFs)の両者を比べて、MOEのほうが大きいならば懸念なしとします。逆にMOEが不確実係数(UFs)より小さいならばば安全性の懸念があるととらえ、調査解析をし管理の方法を検討します
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4-2 HQによるリスク評価
ハザード比(HQ)によるリスク評価もありますが、現在のリスク評価はUFsとMOEの比較で実施することが多くなりました。
データの信頼性が悪いとHQは大きくなる仕組みになっています。MOEによるリスク評価ですと、UFsの数値が外に出るので、評価の信頼性を把握できるという利点があります
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4-3 学物質のリスク評価事例
製品評価技術基盤機構で行ったリスク評価結果の一部を示します。リスク評価はMOEとUFsの大きさで行いました。MOE<UFsの場合、より詳細なリスク評価を行うステップに進みます
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4-4 予想一日摂取量とADIの比較(HQ方式)
この表は、厚生労働省が行っているマーケットバスケット方式を基にした食品添加物のリスク評価です。
全て食品添加物において、摂取量の一日摂取許容量(ADI)に占める割合が多くても1%強に留まっており安全といえます。
注目すべきは、アナート色素は実は紅の木から得られる天然色素ですが、そのほうが人工の食用赤色よりADIが低くなっています(安全な量が少ない)。必ずしも人工だから危ない、天然だから安全ということはないという例です
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4-5  発がん性物質の閾値とリスク評価
発がん性物質については閾値がない場合があります。
閾値のない発がん性物質はDNAに直接影響を及ぼすので、どんなに僅かな暴露でも確率論的にゼロリスクにならないと言われています。すなわち閾値がないのです。がんの発生確率を100万分の1又は10万分の1以下の範囲でリスクを管理するというのが、国際的なコンセンサスとなりつつあります
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4-6 水中のベンゼンの発がんリスクが計算されており、それに基づいてベンゼンの水道水質基準値は10μg/Lとなっています。
この場合の発がんリスクは、一生涯(約70年間)一日2リットルの水道水を飲み、体重70を条件に計算すると、10万人に1人は発ガンするリスクがあるということがわかります。大気中の場合は同様に一生涯に10万人に1.5人は発がんリスクがあるということになります。
なお、現実には水道水中、大気中ともにこの10μg/L、3μg/m3の基準値より低い値となっています
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4-7 かつての米国の発癌性規則(デラニー条項)
かつては米国のデラニー条項によって、発がん性がある物質はどんな濃度においても使用が禁止されていました。40年前は人工物が、がんの原因と思われていたからです。ところが天然物のなかにもがんにつながる物質が多く存在することがわかってきました。その結果、1996年にはデラニー条項の撤廃が行われました
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4-8 化学物質のリスク評価からリスク管理の流れ
化学物質は、環境挙動情報、環境排出情報、そして自然環境情報によって、環境中の濃度評価ができます。さらにそれに生活環境情報から導きだされる平均摂取量によって、暴露評価ができます。この暴露評価結果とハザード評価結果を基に、リスク評価ができます。リスク評価だけでなく、その物質がどのように役に立つのかというベネフィットを考慮して、管理のあり方を検討する流れです
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 5)リスク管理のポイント
5-1 化学物質のリスク評価と管理
ハザード評価、暴露評価からリスク評価をおこない、リスクが許容できない場合は、ハザードを低減するか暴露を低減するか、又は両者かの選択になります。ハザードを低減する場合は代替物質への転換が行われ、そのハザード評価を実施というサイクルになります。一方、暴露を低減する場合は、使用削減、閉鎖系使用、排出削減などを行ったうえで、暴露評価をしなおすというサイクルになります
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5-2 有害性が明らかになった物質は危険?安全?
動物試験などで有害性(毒性)が明らかになると、あわてて、別の物質に代替する傾向があります。本当により安全な物質に代替できればもちろん良いのですが、代替物質の安全が不明の場合が少なくありません。
有害性が明らかになった物質はリスク評価が可能となり、正しいリスク管理につながりますが、有害性の分からない物質はリスク評価ができません。
残念なことに、このような間違ったグリーン調達が行われている場合があります。ハザードが分かったことを活かして、適正に管理するという方向が化学物質を安心・安全に使用できるのではないでしょうか?
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5-3 リスクトレードオフ
あるリスクを削減しようとした行為が、別のリスクを増加させることも予想されます。これをリスクトレードオフと言います。この評価はリスクの評価指標が異なるためとても難しいものとなっています。
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 6)まとめ
6-1 安心安全のための課題
化学物質のリスク評価、管理を進めるためには、一層の努力が必要です。
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6-2 サルは包丁をつかえない
まず、化学物質のハザードを知って、そのハザードに合わせて暴露管理を行うことが、化学物質と付き合う最大のポイントです。
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6-3 化学物質とリスクに関する疑問と回答
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  1. 分けられません。全てはハザードと暴露との掛け算です。最初から危険なものや安全なものはありません。
  2. できません。リスクを完全にゼロにすることはできません。
  3. 間違いです。天然物にも発がん物質など多く存在します。
  4. 毒性の弱い物質でも大量に暴露すれば影響が出ます。代替物質とのハザードと暴露の掛け算によるリスク評価で考えるべきものです。
  5. まだまだ解明されていないことがたくさんあります。逆に、ほとんど解明されていないと言うべきです。
  6. これはかなり怪しいところがあります。
  7. これも残念ながら怪しいところがあります。
  8. そんなことはありません。きちんと勉強すれば理解できるものです。

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